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自分を豊かにするものに、オートマティックはいらない

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公開日:

2026/3/5

by

Ryota Shimajiri

WardRove創設者。東京都出身。洋服の縫製工場を営む父方の実家の影響で、幼少期からファッションに親しむ。文化服装学院を卒業後、アパレルメーカーにて生産管理や新ブランド立ち上げを経験。 その後IT業界へ転身し、開発・執筆・マーケティング・プロダクト企画と、クリエイティブからビジネスまで一貫して手掛ける。フォーマルアドバイザー、カラーコーディネーターなどの資格を保有。

最近は、コスパやタイパという言葉が当たり前のように使われるようになりました。短い時間で成果が出る、安くて性能がいい、そういった判断軸で、仕事の場面では助かることも非常に多いと思います。タイパという言葉自体も、時間に対する成果や満足度を測る物差しとして広く定着してきました。

ただし効率が良いことと、人生が豊かになることは、イコールではありません。コスパやタイパを軸にものを考えれば考えるほど、気づかないうちにパフォーマンスという物差しに合う行動ばかり選ぶようになるので、生活のほうがその物差しに寄っていくのです。

最短で正解に着地することを優先して、選ぶ時間を省略することは、オートマティックな考え方と言ってもいいかもしれません。

今回は、ファッションの文脈でこのオートマティックな考え方を用いた時に、どんなことが起こるのかを考えていきたいと思います。

いつから効率が、正解の顔をするようになったのか

そもそも時間やコストを細かく測る発想は、世の中の便利さとセットで広がりました。

18世紀後半、産業革命以降の工場制で手工業から機械工業への転換が行われ、仕事が「終わるまでやる」から「決まった時間に集めて、決まった時間まで働く」に変わっていきます。工場の時計とベルで一日の流れが揃えられて、働く側は時間を売る形になり、管理する側は時間の中身を詰める動きになりました。これまでの手工業から、機械工業への転換が人々の生活や経済の構造を大きく変えたのです。

この流れの肝は、時間で区切ると比較ができるようになることです。誰が早いか、どれが遅いか、どこがムダかが見えるので、改善もしやすいし、組織としてより強固になります。効率というのは仕組みの言葉なのです。測れるものを並べると、人を同じ物差しで比べられるし、比べられると管理もしやすい。

筆者としては、このようにコスパやタイパみたいなオートマティックな言葉は資本主義的な発想だと思っていて、上流階級が労働者階級を支配するための仕組みとして機能している面もあると感じています。数字に合う動きだけが「正しさ」になっていくと、生活や人生の側が、その正しさに合わせにいく形になりやすいからです。

決して仕組みとしての効率化そのものが悪いと言っているわけではないです。人生までそれに合わせる必要はないということです。自分の時間や寄り道は、自分で守ったほうがいいと思います。

豊かさは、効率の悪いもの

私が無駄を残したいのは、反効率をやりたいからというわけではありません。選ぶ時間が楽しいからです。店で素材を触って、鏡の前で一回止まって、今日はこっちかなと迷って、少しだけ気分が上がる。言ってしまえばこれら全ては無駄なのです。

しかしこれらがあるからこそ、その日がちゃんと自分の一日になるのです。私にとっては、あのワクワクが豊かさです。

逆に言うと、最短で正解に着地するルートに寄せすぎると、そのワクワクが削れてしまいます。服は生活に必要なものとしては残りますが、それ以外のものではなく面白いものとしては残りにくい。ここがもったいないと思っています。

まとめ

コスパやタイパは便利です。仕事では助かるし、生活の一部では使ったほうがいい場面もあります。ただ、効率は仕組みの言葉なので、人生までそこに合わせる必要はありません。自分の時間や寄り道は、自分で守ったほうがいいと思っています。

服はとくに、選ぶ時間が楽しい分野です。買う前提じゃなくて少し店に寄る、触って確かめる、試着して形を見る、直して使う、少し迷ってその日の条件で決める。

こういう小さな無駄を残すだけで、服は作業になりにくいし、選ぶ時間のワクワクも残ります。日々の豊かさというものはそういったところに宿るのではないでしょうか。

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