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服の品質は昔の方が良かったのか?ヴィンテージ神話の正体と現代服との違いを考える

公開日:

2026/2/16

by

Ryota Shimajiri

WardRove創設者。東京都出身。洋服の縫製工場を営む父方の実家の影響で、幼少期からファッションに親しむ。文化服装学院を卒業後、アパレルメーカーにて生産管理や新ブランド立ち上げを経験。 その後IT業界へ転身し、開発・執筆・マーケティング・プロダクト企画と、クリエイティブからビジネスまで一貫して手掛ける。フォーマルアドバイザー、カラーコーディネーターなどの資格を保有。

古着屋で90年代のデニムを触ったとき、思ったより重くて、生地がぎゅっと詰まっている感じに驚くことがあります。その瞬間に「あ、やっぱり昔の服の方が良かったのかも」と思ったりするかもしれません。実際、当時の服には厚い生地や強い縫製のものが多く、いまの量販服とは手触りが違う場面が多々あります。

ただ、「昔は良くて今は悪い」と言い切ってしまうのは少し乱暴な気もします。そこで今回はどこが違うのかを、いくつか具体例を挙げながら考えていきたいと思います。

リーバイス501は本当に今より良いのか

ヴィンテージの話になると、まず名前が出るのがリーバイスの501でしょうか。1960〜70年代ごろの、大文字「E」表記の赤タブ、いわゆる「Big E」時代の個体は、厚みのあるセルビッジデニムが使われていて、糸のムラ感も強く、色落ちもはっきり出るので、穿き込むほど表情が変わっていきます。

とはいえ、最初から快適に穿けるというわけではなく、生地は硬いし縮むし、色も出るしで、買ったその日からラクに穿くというより、時間をかけて馴染ませる前提の設計になっています。

一方、店頭に並ぶ現行の501は、最初から柔らかく穿けるように加工が入っていたり、オンス(生地の重さ)も抑えられていたりして、穿き始めのストレスが少ないように作られています。

ここを「品質が落ちた」と言う人もいますが、実態としては「最初から穿きやすい」「売り場で選びやすい」という設計に変わっただけで、良し悪しというより、そもそもの前提条件が違う、という考え方がしっくりくるのではないかと思います。

ワークウエアが頑丈だった理由

昔の服が強いと言われる背景には、用途そのものの違いもあります。たとえば、アメリカン・ワークウェアの老舗としても有名なBEN DAVIS(ベンデイビス)は、厚手のツイルと強い縫製を売りにしてきましたが、これは「丈夫に見せたいから」というわけではなく、労働現場で破れたら困るという前提があるからで、耐久性が最優先になります。

トリプルステッチや補強はデザインではなく必要性から生まれているので、結果として重くて強い服になり、いま触っても「作りが違う」と感じやすいのです。

その一方で、いまの服の多くは日常着で、毎日同じ一着を着続けて酷使する前提ではありません。そういう市場で「必要以上に重くて頑丈」に振ると価格が上がり、着心地も硬くなり、選ばれにくくなるので、どこにコストを使うかが変わっていきます。

ちなみにBEN DAVISだとトラッカージャケットなどが個人的に渋くておすすめです。

それでも「昔の方が良い」と感じやすい仕組み

正直な話、古着として今も残っている昔の服は、そもそも丈夫だった個体が中心です。弱いものはとっくに処分されているので、店頭に並ぶのは「生き残った当たり」が多くなり、その状態を見て「昔は全部良かった」と感じてしまうのです。

さらに価格の問題も大きくて、90年代に2万円だったジャケットをいまの感覚で見ると、同じ「2万円」でも重みが違います。当時の上位価格帯の服と、いまの中価格帯の服を同じ土俵で比べてしまうと、差が出るのは当たり前で、品質の話というより比較位置がずれているだけ、というケースも多いと個人的に思います。

素材は本当に悪くなったのか

素材についても「天然素材が減って化繊が増えた=劣化」と言われがちなのですが、ここもそう単純ではありません。現代のポリエステルや混紡素材は軽くて乾きやすく、シワになりにくく、ストレッチも効くので、毎日の扱いやすさという意味では明らかに良くなっている部分があります。

耐久性だけで見れば昔の厚手コットンが有利な場面はありますが、着心地や手入れのしやすさまで含めると、いまの服の方が「生活に合う」ように作られているとも言えるのです。

過去を真似るのではなく、分析して作り直すブランドもある

ヴィンテージの良さを理解したうえで、いまの基準に合わせて組み直すブランドもあります。たとえば、岡山発のANACHRONORM(アナクロノーム)は「次なる時代の新たなヴィンテージの創造」を掲げ、デニムを軸にしながら、加工やエイジング、リメイクも含めて、時間が経って価値が出る服を現代の作りで形にしようとしています。

だから、雰囲気だけをそのまま再現するのではなく、いまの生活で着やすいシルエットやバランスに寄せながら、古着っぽさの出方を設計している、という見方ができます。ここを見ると、品質が一方向に落ちたというより、良いと感じるポイントの種類が増えて、選び方が分かれてきただけ、と考えた方が実感に近いのではないでしょうか。

ANACHRONORM

まとめ

服の品質は昔の方が良かったのかと聞かれたら、丈夫さや生地の厚みという一点では、昔の服に分がある場面は確かにあります。

リーバイスのヴィンテージや、ワークウエアの定番に触れると、その「物としての強さ」は分かりやすいところです。一方で、いまの服は軽さや着心地、手入れのしやすさ、価格とのバランスまで含めて最適化されているので、同じ物差しで比べると話が噛み合わなくなります。

結局のところ、品質という言葉は主語がデカく、何を指しているのかが人によって全然違うので、厚みや頑丈さを求めているのか、日常での扱いやすさを求めているのかを自分の中で整理しておくのが大事です。

昔が良い、今が悪いで片付けるより、いまの服はどこにお金をかけていて、昔の服は何を優先していたのか。そこを比べてみると、違いそのものがけっこう面白いかもしれません。

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