トラックジャケットとは、もともと陸上競技やサッカーなどのウォームアップや移動着として使われてきたトラックスーツの上半身側を指す服です。
前開きのジップ、首元までつながる襟、動きやすさを前提にした軽い素材、肩や袖に入るラインなどが特徴です。このあたりのデザインが、いわゆるトラックジャケットらしさになります。
ちなみに日本では、トラックジャケットのようなスポーツ系の上着をまとめてジャージと呼ぶことも多いのですが、トラックジャケットは服の種類の名前で、ジャージはメリヤス生地(天竺生地)の総称です。
今回は、トラックジャケットとは何かを整理しながら、大人が普段着として取り入れるならどこを見ればいいのか、ジャージ感を強く出しすぎない選び方まで解説していきたいと思います。
トラックジャケットの歴史
トラックジャケットは、その名の通り陸上競技や球技の選手が、試合前後のウォームアップや移動のときに着ていた上着から広がった服です。今でこそファッションアイテムの定番として見かけますが、出発点はあくまでスポーツウェアでした。
前を開け閉めしやすいジップ、首元を少し覆う立ち襟、袖口と裾のリブといった作りも、見た目のためというより、体を冷やしにくくして動きやすくするための工夫として定着していきました。
大きな転機になったのは1960年代後半。adidasは当時、主力がほぼシューズでしたが、軽くて通気性があり、量産しやすいナイロン系素材の広がりを受けて、スポーツ用アパレルの可能性を本格的に考え始めます。

(画像出典: adidas)
1966年に生産が始まり、1967年には最初期のトラックスーツが発売されました。中央ジップのトップスに、腕と脚へ3本線を入れたデザインは、この時点ですでに現在のトラックジャケットに近い形ですね。
フランツ・ベッケンバウアーの名を冠したモデルを展開し、その人気によってトラックスーツは選手の練習着というだけでなく、憧れの選手に近づける服として広がっていきます。
1969年には西ドイツ代表も揃って着用していて、ここでトラックジャケットは競技のための服から、見られる服へ少しずつ変わっていきました。さらに1970年代には、競技場の外でも着る快適な服として広がり、スポーツウェアのまま街で着る感覚も少しずつ定着していきます。

(画像出典: PUMA)
同じ時期に、PUMAでも1968年にT7が登場しています。肩から袖に入る独特のラインは、今でもトラックジャケットらしい見え方として残っています。つまり、今私たちがトラックジャケットらしいと感じる見た目は、この時代にかなり形作られたということです。
その後、トラックジャケットは単なる競技用ウェアではなく、街で着る服として定着していきました。最近急に出てきた流行アイテムというより、スポーツウェアとして生まれた形が、そのまま長く街着として残ってきた服だと考えると分かりやすいと思います。
トラックジャケットの特徴
一番分かりやすい特徴は、まず前がジップになっていることです。シャツやスウェットよりもスポーティーに見えやすいのは、この前開きの形が大きいと思います。羽織りとして使いやすい反面、見え方としてはかなり軽くなります。
またトラックジャケットは襟がなくて丸首、というより、首元が少し立つ形のものが多いです。この形が入ることで、普通のスウェットやカーディガンとは違う見え方になります。ここがトラックジャケットらしさでもありますが、同時にスポーツ感が出やすいところでもあります。
よくあるのはポリエステル系のジャージ素材や、表面が少しなめらかなニット系の生地です。動きやすく、洗いやすく、軽い。こうした実用性があるから長く残ってきたわけですが、日常着として見ると、この軽さがそのままジャージ感につながることもあります。
袖のラインも特徴の一つです。2本線や3本線、配色の切り替えが入ると、一気にスポーツウェアらしさが強くなります。逆に言うと、ここが控えめだとかなり着やすくなります。
ジャージ感が強く出やすい理由
ツヤが強くて薄い生地は、スポーツウェアとしては普通なのですが、街で着るとどうしてもラフに見えやすいです。とくに黒に白ラインのような分かりやすい配色で、生地まで薄いとなると、急にジャージ感が強く出やすくなります。
次に色です。赤、青、グリーンのようなはっきりした色に、白ラインやロゴがしっかり入ると、それだけでかなりスポーツ寄りになります。もちろんそれが格好いい場面もありますが、落ち着いた大人の普段着としてはラフに寄りすぎるかもしれません。
もう一つ大きいのがサイズ感です。細くて着丈が短いものは昔のジャージっぽく見えやすいですし、逆に大きすぎるものはラフな印象が強くなりやすいです。トラックジャケットはサイズの違いが見え方にそのまま出やすいので、何となく選ぶより、少しだけ肩の落ち方や着丈を見て選んだ方が取り入れやすいと思います。
大人が選ぶならどんなものを選ぶべきか
大人がトラックジャケットを選ぶなら、まず見るべきなのは、服単体で見たときにスポーツウェアの印象が強すぎないかどうかです。ここが整っていれば、普段着にはかなり使いやすくなります
まず取り入れやすいのは、色数が少ないものです。黒、ネイビー、チャコール、ダークブラウンのような落ち着いた色で、ラインが入るとしても同系色に近いもの。このくらいだと、トラックジャケットらしさは残りつつ、見た目が騒がしくなりにくいです。反対に、配色のコントラストが強いものや、色が何色も入っているものは、それだけでスポーツ感が前に出やすくなります。
素材は、表面が強く光るものより、少しマットに見えるものの方が普段着としては使いやすいと思います。手で持ったときに薄すぎないか、生地が頼りなく見えないか、このあたりを見るのがおすすめです
襟の形も大事です。首元までしっかり立つ形は格好いいのですが、高さが強すぎると、見た目のスポーツ感も強くなります。最初の一着なら、襟が高すぎず、開けても閉めても不自然になりにくいものの方が使いやすいです。
サイズ感は、細すぎず大きすぎないことが前提です。肩が少し落ちるくらいで、身幅に少しゆとりがあり、着丈は長すぎない。このくらいが一番取り入れやすいと思います。細くて短いものは昔のジャージっぽく見えやすいですし、逆に大きすぎるものはラフすぎる見え方になりやすいです。
最後に、ロゴやラインの強さも見ておきたいところです。胸にワンポイント、袖に細いラインくらいなら十分です。大きいロゴ、太いライン、配色の切り替えが多いものは、アイテム単体では格好よく見えても、他との組み合わせが難しくなります。
筆者としては、CAHLUMNのナイロントラックジャケットがおすすめ。ツヤを抑えたマットなナイロンに、少しエッジのあるデザインで、ジャージっぽく見えにくい一着です。

大人が着るならどう合わせるか
選び方が分かったら、次は合わせ方です。ここで大事なのは、トラックジャケット以外のアイテムまでスポーツに寄せすぎないこと。トラックジャケット自体にスポーツ由来の要素があるので、ほかも同じ方向に振ると、全体が一気にジャージっぽく見えやすくなります。
いちばん簡単なのは、パンツを普通の街着に戻すことです。黒か濃紺のデニム、あるいは少しゆとりのあるストレートパンツに、無地のTシャツ、その上から落ち着いた色のトラックジャケットを羽織る。このくらいなら、スポーツ感が出すぎずかなり自然にまとまります。靴もランニングシューズより、ローテクスニーカーやレザー系のスニーカーの方が落ち着きやすいです。
もう少しきれいめに寄せたいなら、スラックスと合わせるのも良いと思います。黒やチャコールのスラックスに、白かグレーの無地Tシャツ、その上からネイビーか黒のトラックジャケット。この組み合わせなら、トラックジャケットの軽さがちょうどよく働いて、固すぎず、崩しすぎない見え方になります。

反対に気をつけたいのは、スポーツ要素を一度に重ねることです。たとえば、キャップ、派手なスニーカー、ナイロンパンツ、ロゴTを同時に入れると、トラックジャケットのスポーツ感まで一緒に強く出てしまいます。どれか一つなら成立しても、重なると急に運動着っぽく見えやすくなります。
なので大人が着るなら、トラックジャケットを主役にしたら、それ以外はなるべく普通の服に寄せる。この考え方で見ると、かなり合わせやすくなると思います。
まとめ
トラックジャケットは、もともとスポーツのウォームアップや移動着として広まった服ですが、今では街着としても定着しているアイテムです。前開きのジップ、少し立つ襟、軽い素材、袖のラインなどが代表的な特徴です。
大人が取り入れるなら、ジャージ感を強く出しすぎないことが大事です。色数を抑え、ツヤの強すぎない素材を選び、サイズは細すぎず大きすぎないものを選ぶと、かなり着やすくなります。
合わせ方としては、パンツまでスポーツに寄せすぎないのがポイントです。デニムやスラックスのような普通の街着に戻しながら使うと、トラックジャケットの軽さがうまく生きます。まずは黒やネイビーの控えめな一着から見てみてはいかがでしょうか。
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