服を買うとき、「日本製ならとりあえず安心」と思う人は結構多いと思います。
今の日本で売られている衣料品の多くは海外で作られていて、経産省の「繊維産業の現状と政策について」でも、2022年の衣料品の輸入浸透率は数量ベースで98.5%とされています。つまり、店頭に並ぶ服の大半は海外生産で、その中で国内生産の服は少数派なのです。
そうなると、国内で作られている服は、安さだけで勝負するものより、生地や縫製、加工の良さで選ばれるものが多くなります。実際、日本の繊維産業は素材や生地のような分野に強みを持っています。このような理由から、日本製にいいものが多いと感じるのは、ただの思い込みではないのです。
ただ、日本製と書いてあればそれで十分かというと、全てが良いというわけでもありません。日本製という言葉には意味がありますが、その一言だけでは分からないこともたくさんあります。
今回は、日本製がなぜ信頼されやすいのかを見ながら、「日本製なら安心」という言い方がどこまで本当なのかを考えてみたいと思います。
日本製が信頼されやすいのはなぜか
日本製が信頼されやすいのは、国内で作られている服の立ち位置が昔とは変わってきているからです。
今は、量をたくさん作る服の多くが海外で生産されています。その中で国内で生産されている服は、価格だけではなく、生地、縫製、加工のようなところで選ばれるものが多くなります。
たとえば岡山のデニムや尾州のウールがよく話題になるのも、日本の強みがそういう分野に残っているのです。 先ほどの経産省の資料でも、日本の繊維産業は高付加価値の分野で競争力を出していく必要があるとしています。
ただし、「日本製」が分かる範囲には限りがある
ここで一度分けて考えたいのは、「日本製」という言葉が何を言っていて、何を言っていないのかです。
日本製と書かれていると、生地もボタンも縫製も全部日本だと思いがちです。ただ、景品表示法上の「原産国」は、その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国とされています。
つまり、日本製という表示は、その服を商品として成立させる大きな工程がどこで行われたかを示す考え方であって、その服のすべての材料や部品の出どころまで一言で説明するものではありません。
ここを言葉通り受け取りすぎると、日本製なのに思っていた感じと違う、となりやすいということです。たとえば、生地まで全部国内だと思って買ったのに、そこまでは書かれていなかった、ということは普通にありえるので注意が必要です。
日本製という表示は意味がありますが、その一言だけで服の中身全部までは分からない、ということです。
ラベルが大事、その服がどれくらい使いやすいか分かる
日本製かどうかを見る前に、ラベルの他の表記を見てみましょう。
繊維製品には家庭洗濯等取扱方法の表示が必要で、JISの記号を使って表示すること、ラベルは消費者が分かりやすい場所に見やすく、簡単には取れない方法で取り付けることが示されています。繊維の組成についても、混用率の大きいものから順に表示する方法などが定められています。
つまり、ラベルを見れば、その服に何の素材がどれくらい入っているのか、家で洗えるのか、アイロンや乾燥機はどうなのか、といったことが分かります。これが結構重要です。
見た目が良くても、手入れが大変すぎる素材だと着る回数は減りやすいですし、ポリエステルが多いのかコットンが多いのかで、見え方も着心地も全然変わります。
もちろん、ラベルだけで服の出来が全部分かるわけではありませんが、その服を普段どれくらい気軽に着られるかは、ラベルを見るだけでも分かるのです。
服の出来は、どこの国で縫ったかだけでは決まらない
服の良し悪しは、最後にどこで縫ったかだけで決まるわけではありません。
QTEC(キューテック)の「縫製工場技術指導」では、縫製だけでなく、表示確認、検品、検針、採寸、原材料や副資材の管理、裁断から縫製、仕上げ、ラベル付け、包装、出荷までの管理、設備の点検やメンテナンス、外注管理まで確認するとしています。
これは、服の出来が工程の途中で少しずつ決まる、ということです。生地が良くても裁断が甘ければ左右差が出ます。縫製がきれいでも、寸法の管理が雑ならサイズのぶれが大きくなります。仕上げが甘いと、店頭で見たときに全体が整って見えにくくなります。
なので、日本製だから安心というより、日本製の服には、そうした工程まで丁寧に見ているものが比較的多い、と考えた方が実態に近いかなと思います。筆者自身も、とあるアパレルメーカーの知人から、日本の生産管理は非常に厳しいと聞いたことがあります。
とはいえ、日本製なのに微妙なクオリティの服も当然あります。
服の出来は総合点です。生地の選び方、仕様の詰め方、縫製、検品、サイズの安定感まで全部入って、着たときの満足感が決まります。
原産国だけで服の良し悪しが全部決まるわけではないという話です。
まとめ
日本製なら安心、という感覚はだいたい合っています。国内に残っている服には、生地や縫製で選ばれているものが実際に多いです。
ただ、日本製という一言だけで、その服の中身全部までは分かりません。原産国表示が示しているのは限られた範囲ですし、服の出来は、裁断、縫製、検品、仕上げまで含めた積み重ねで決まります。
日本製という表示は入口として信用しつつも、最後はその服そのものを見るのが良いのかもしれませんね。
参考文献
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