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市勢善浩(いちせ よしひろ)
フェイバニッツ合同会社 代表。1962年三重県生まれ。35年間アパレル企業に勤務し、2021年3月に、日本製メンズニットジャケットのD2Cブランド『FavorKnits(フェイバニッツ)』を創業。主にミドル世代男性をターゲットに、素材・デザイン・着心地すべてにこだわったものづくりを続けている。
主な受賞歴
2020年11月 日暮里デザインファッションコンテスト2020 グランプリ受賞
2021年11月 荒川区ビジネスプランコンテスト 東京商工会議所荒川支部長賞受賞
2023年2月 東京シニアビジネスグランプリ 優秀賞・オーディエンス賞受賞
2024年11月 荒川区第3回モノづくりブランド「ara!kawa」認定
1. 「FavorKnits」で実現する、理想のニットジャケット
島尻:
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
まずは改めて、市勢さんが現在どのような活動をされているのか、お聞かせいただけますか?
市勢:
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
私は現在、「FavorKnits(フェイバニッツ)」という日本製メンズニットジャケットのD2Cブランドを運営しています。
主にミドル世代の男性をターゲットに、素材やデザイン、すべてに徹底的にこだわったものづくりを行っています。
2. 「35年のキャリア」で培った顧客ファーストの原点
島尻:
アパレル業界で長くご活躍されてきたと伺いました。これまでのご経歴を教えていただけますか?
市勢:
大学を卒業してから、約35年間アパレル企業に勤めていました。そのうち30年ほどはマーチャンダイジング、つまり商品企画の仕事に従事してきました。
60歳の定年を目前に「生涯現役でありたい」「大好きなアパレルにずっと関わっていたい」という思いから、57歳で会社を退職しました。
その後は、足りない知識を補うために1年間ニット専門学校に通い、2021年3月にフェイバニッツ合同会社を設立しました。
島尻:
長いキャリアの中で多くの経験を積んでこられたんですね。
これまでのご経験の中で、どのような思いが独立やブランド立ち上げに繋がったのでしょうか?
市勢:
会社員時代には、どうしても企業の論理が優先されてしまい、セールの乱発や製品廃棄、コストダウンなど、本来大切にすべきお客様への価値提供よりも、企業都合が上回る意思決定を数多く目にしてきました。
だからこそ、自分でブランドを立ち上げる際は「顧客を決して裏切らない」を理念にし、お客様ファーストを貫きたいと考えました。

3. 職人技が支える日本製の誇り
島尻:
FavorKnitsのニットジャケットは、一般的なものとはかなり違う作り方をされていると伺いました。
実際にどのあたりに一番のこだわりが詰まっているのでしょうか?
市勢:
はい。一般的なニットジャケットは、ニット地の反物を裁断して縫製していくものが多いのですが、私たちのジャケットは“編機”でパーツごとの形状に編み上げ、リンキングという手作業で編み目を繋ぐ縫製方法を用いています。
この手法によって、編地だけでなく縫製部分も伸縮性があり、裏地や芯地を使わない“完全一枚仕立て”なので、とても軽くて動きやすい着心地が特徴です。

島尻:
本当に軽やかですよね。
市勢:
そうなんです。
通常、編み物製品はどうしても平面的になりがちですが、当社では”増やし目、減らし目”などの編立てテクニックを駆使した立体設計を行っています。
これによってウエストサイドが自然に絞れ、体型にやさしくフィットした、見栄えの良いシルエットを実現しています。

島尻:
なるほど、見た目の美しさと着心地、どちらも兼ね備えているんですね。
また、製造の現場では環境への配慮も意識されているとお聞きしました。
市勢:
はい。一般的なアパレル製品では、生地を裁断する際に20〜30%もの生地が廃棄されることがあります。
ですが、当社のジャケットはパーツごとの形状に編地を作るので裁断工程がありません。
そのため、生産工程での廃棄原料ゼロを実現できています。
島尻:
まさに今の時代に必要なサステナブルなものづくりですね。サイズ設計にも独自の工夫があるとうかがいましたが、その点もぜひ教えてください。
市勢:
ミドル世代男性100名の体型データを分析し、胸囲とウエストのバランスなど、実際の体型に合わせて独自のサイズ設計を行いました。
その結果、S〜XLまでの4サイズ展開で、どの体型の方にも快適に着ていただけるようになっています。
島尻:
そこまでこだわり抜かれているのは素晴らしいですね。
日本製へのこだわりも感じますが、あえて国内生産にこだわる理由はなんでしょうか?
市勢:
私たちのジャケットは、新潟県五泉市の協力工場でつくられています。
ニットの製造は、試編み、編機のデータ作成、編立、縫製、洗い、プレス、仕上げと多岐にわたり、天候にも左右されるほど繊細な作業です。
まさに職人技の世界で、今や日本国内で流通する衣料品のうち、日本製はわずか1.5%しかありません。
日本の高度な職人技でつくった本物の高品質な製品であることを、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思っています。
また、日本の伝統工芸である水引を使った“梅の花”のブートニエールをジャケットに添えて、日本製であることの証としています。

4. 最高品質を手の届く価格で
島尻:
販路や価格設定についても、FavorKnitsならではの哲学があると感じました。
どんな思いで現在の仕組みにたどり着かれたのでしょう?
市勢:
FavorKnitsでは、①店舗を持たない ②セールをしない ③一般的な設定より高い原価率、という販売方針をとっています。
この方法により、品質にとことんこだわった商品を、お買い求めやすい価格でご提供することができます。
一般的なアパレル企業の商品と比べて、同じ生産コストなら約半分の価格でご提供できるのが強みですね。
この考え方を「ETHICAL PRICING POLICY(エシカル・プライシング・ポリシー)」と呼び、大切にしています。

展示会の様子
島尻:
購入後のメンテナンスサービスも行っているとお聞きしました。
市勢:
はい。ご購入いただいたお客様に、長く大切に着ていただけるよう、メンテナンスサービスを提供しています。
たとえば、シーズン終わりに毛玉のカットや縫製のチェック、クリーニングを行い、次のシーズンも快適にお召しいただけるようにしています。
服もスポーツ選手のように“オフシーズンのケア”が大事だと考え、そんなサービスを始めました。
5. 日本発エシカルブランドの未来像
島尻:
市勢さんご自身が、服作りで「譲れない」と感じることや、ご自身のファッション観についても教えていただけますか?
市勢:
私自身、昔から服を選ぶときは“天然素材を中心とした上質な素材”であること、肩が凝らない着心地の良さ、自分の体型にフィットしていること、流行に左右されないシンプルなデザインかどうか――このあたりを基準にしてきました。
今の商品づくりも、この基準がそのまま方針になっています。
また、製造や販売の現場が社会的な責任を果たしているかどうかも、今では非常に重視しています。
着る人の心が豊かになるような、そんな服を自分自身も着たいし、提供していきたいと思っています。

WardRove読者へのメッセージ
島尻:
まさに“心豊かにする一着”というブランドメッセージそのものですね。
最後に、FavorKnitsのこれからの展望や、WardRove読者へのメッセージをお願いします。
市勢:
私たちはこれからも、お客様と揺るぎない信頼関係を築きながら、高品質で納得感のある価格の“日本製”ニット製品をお届けし続けたいと思っています。
【日本発、世界に向けたエシカルアパレルブランド】として、これからも挑戦を続けていきます。
島尻:
本日は貴重なお話をありがとうございました!
今後のご活躍も引き続き楽しみにしております。
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