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小澤秀崇の靴磨きコラム

#4 身だしなみはなぜ重要なのか?歴史から考える信用の作り方

公開日:

2026/6/1

by

Ozawa Hidetaka

靴砥師/レザーメイクプロフェッショナル。世界で唯一の「大使館公認 靴砥師」として、各国の駐日大使から厚い信頼を得ている。大使館関係者からは、技術と感性を兼ね備えた人物として【イデア(Idea)】【アルティスト(Artiste)】の名で親しまれている。2019年に出張靴磨きサービス『EAT POLISH LOVE』を創業。革靴のTPOや素材に応じた“しつらえ”を施す独自の哲学で支持を集める。アフリカ・ウガンダでは靴磨きによる自立支援活動を実施。現在は国内外で講演やレザークラフト教育にも力を入れている。

こんにちは。


靴磨きの仕事を始めたとき「なぜ靴を磨くのか?」 「身だしなみにそこまで気を遣う必要があるのか?」と自問自答することがありました。

私はその理由を考えるとき、大体、歴史がヒントを与えてくれます。

日本の身分制度とヨーロッパの階級制度

歴史を振り返ると、日本にもヨーロッパにも、人の立場を区別する仕組みがありました。

ただし、その内容は少し異なります。
日本は、武士を中心とした「身分制度」。
ヨーロッパは、貴族を中心とした「階級制度」です。

つまり、日本の武士は、将軍に仕える軍人であり行政官でした。

一方、ヨーロッパの貴族は土地を所有し、その土地を支配する領主でした。この違いは、身だしなみの考え方にも影響したのかもしれません。

ヨーロッパの貴族は、自らの財力や階級を外見で示す必要がありました。一方、日本の武士は豪華さを競うよりも、礼節や作法を重視しました。

身分制度と階級制度の違いとは

欧州の貴族は、「私はこの階級に属している」ことを外見で示す必要がありました。

一方、日本の武士は、豪華さよりも礼節や作法が重視されました。

欧州は「見せる文化」
日本は「振る舞う文化」

という違いがあったのかもしれません。

それでも共通していたこと

仕組みは違っても、一つ共通点があります。それは、『自らの立場や信用を外見で示していたこと』です。

現代のように履歴書やSNSがある時代ではありません。
初対面の相手がどのような人物なのかを判断する材料は限られていました。

だからこそ、

服装

髪型

振る舞い

マナー

が重要だったのです。

武士も貴族も身なりを整えた

ヨーロッパの貴族は、豪華な服や磨かれた革靴で、自らの教養や財力を表現しました。一方、日本の武士は華美さよりも、清潔感や礼節を重視しました。

どちらも共通しているのは、『身なりは自分自身を表すもの』という考え方です。
手入れの行き届いた姿は、その人の規律や信用を示していました。

階級はなくなったが、価値観は残った

現在の日本には身分制度も階級制度もありません。

しかし、人が相手を判断する基準は大きく変わっていません。
私たちは無意識のうちに、

清潔感があるか

きちんとしているか

丁寧に物を扱っているか

を見ています。

これは差別や優劣ではなく、「この人は信頼できるだろうか」を判断するための、人間の自然な行動なのだと思います。

靴はその人の姿勢を映す

私は靴磨きという仕事をしています。

もちろん革を保護し、長持ちさせるという実用的な意味もあります。しかし、それ以上に感じるのは、靴の手入れには、その人の生き方や考え方が表れるということです。

私はこれまで、多くの経営者や外交官の靴を磨かせていただきました。不思議なことに、仕事のできる方ほど靴や鞄を丁寧に扱われている印象があります。

もちろん靴が綺麗だから仕事ができるわけではありません。
しかし、自分の持ち物を丁寧に扱う姿勢と、仕事への姿勢が重なって見えることは少なくありません。

身分を示すために靴を磨く時代は終わりました。けれど、自分自身を大切にし、相手への敬意を表すために身だしなみを整えるという価値は、今も変わらないのではないでしょうか。

だから私は今日も靴を磨きます。

「人は足元を見る」

その言葉には、長い歴史の中で受け継がれてきた意味があるように思います。

WardRoveでは他にもコーディネート術からアイテム選びなど、ファッションに役立つ情報を発信中です。

理想のワードローブの参考に、ぜひ他の記事もチェックしてみてください。

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